以前は、何も考えずにひょいとトイレに入っていたはずです。それが今は、トイレの横で一瞬長く立ち止まったり、入ってはすぐ出てきて落ち着かなかったり、3フィート離れたバスマットが濡れていたり。反抗しているように見えます。でも、まずそうではありません。
10歳を過ぎるあたりから、猫トイレはただの家具ではなくなり、障害物競走のコースになります。救いなのは、シニア猫のケアで悩むことの多くと違って、これはメジャー1本あれば午後のうちに片づけられる問題だということです。
なぜ起きるのか
10歳で変わること
2021年のAAHA/AAFP猫ライフステージガイドラインは、「シニア」を10歳超と定めています。1 そしてこの時期には、三つの変化がそろって訪れがちです。行き着く先は、どれも同じ場所です。
- 関節は、見せている以上に痛んでいます。 コーネル大学の猫健康センターによれば、12歳を超えた猫の90%に変形性関節疾患の所見が見られます。2 猫は痛みを表に出すのが極端に苦手な動物です。足を引きずることも、鳴いて訴えることもありません。代わりに表れるのは、いつのまにかカウンターに飛び乗らなくなったこと、そして6インチの縁の前で足を止めるようになったことです。
- 腎臓に負担がかかっているかもしれません。 慢性腎臓病は、10歳を超えた猫の最大40%、15歳を超えた猫の80%に見られます。3 腎臓が尿を濃縮する力を失うと、猫は水をたくさん飲み、たくさん出すようになります。量が増え、回数が増え、我慢がきかなくなる——ちょうどトイレをまたぐのがつらくなった、その時期にです。
- 忘れはじめているのかもしれません。 認知機能不全に当てはまる行動の変化が少なくとも一つ見られたと飼い主が報告した割合は、11〜14歳の猫で28%、15歳以上の猫では半数を超えます。4 粗相は、その代表的なサインの一つです。空間の記憶が薄れてきた猫が、トイレを必要としなくなるわけではありません。間に合ううちに見つけられなくなるのです。
模様替えを始める前に、まず動物病院へ。 トイレの様子が急に変わった猫に必要なのは、部屋の作り替えではなく血液検査です。ここから先の話は、病気の可能性がすでに否定されていることが前提です。なお、オス猫がいきんでも数滴しか出ないときは、猫砂の問題ではなく、その日のうちに受診すべき緊急事態です。
トイレのつくり
トイレを組み直す
- 入り口を低くする。 いちばん効果の大きい変更がこれです。AAFP/ISFMの粗相に関するガイドラインは、収納ケースの一面を切り下げて、年をとった猫や関節に問題のある猫が「よじ登る」のではなく「歩いて入れる」ようにすることをすすめています。5 公式な数値はありません。そもそも大事なのは壁の高さそのものではなく、猫砂を入れたあとに残る段差のほうです。1インチほどを目安にしてください(詳しくは後述します)。今のトイレが気に入っているなら、一面にU字の切り欠きを入れ、断面をなめらかに整えるだけで十分です。お金をかけずにできて、市販のどんな製品にも引けを取りません。
- 床面積に余裕をもたせる。 同じガイドラインは、鼻先から尻尾のつけ根までの体長のおよそ1.5倍の大きさを求めています。5 まず猫を測り、次にトイレを測ってみてください。市販のトイレはたいてい足りません。関節が痛む猫には、壁に体を預けずに向きを変えられるだけの余裕が必要です。広くて開けたトイレは、どの年齢でも狭くて窮屈なトイレに勝ります。この年齢では、なおさらです。
- 移動距離を短くする。 猫が使うフロアには、それぞれ最低一つはトイレを置いてください。関節が痛む猫がまず諦めるのは階段です。二階分も離れたトイレは、ないのと同じです。今あるトイレはそのままにして、足してください——動かしてはいけません。記憶が薄れかけた猫は、それだけで家の地図を丸ごと見失います。
- 明かりを一つ残す。 コーネル大学は、常夜灯が、視力の衰えたシニア猫が暗くなってからも道を見つける助けになると述べています。6 トイレのそばに安価な人感センサーライトを置くだけで、午前3時の現実的な障害が一つ消えます。
猫砂
中身を見直す
- 足に優しく、呼吸に優しく。 いまは、二つのことが他のどの年齢よりも効いてきます。踏んだときの感触と、舞い上がる粉じんの量です。関節が痛む猫は、砂に沈み込むのではなく、表面で踏ん張って体を支えます。だから、粗くて重い粒より、軽くて粒のそろった猫砂のほうが向いています。そして一日の大半を横になって過ごす猫は、床のすぐ上の空気を吸っています。粉じんの少なさは、もう「あればうれしい」ものではありません。
- 固まるだけの深さを——2〜3インチ。 AAFP/ISFMのガイドラインが挙げる1.25インチは、目標ではなく下限です。5 そして植物系の猫砂は、ベントナイトの猫砂よりも深さを必要とします。層が薄すぎると、塊ができあがる前に尿が底に届いてしまい、きれいな塊を持ち上げる代わりに、底にこびりついた部分を削り取ることになります。シニア猫には、その余裕がむしろ多めに要ります。若いころほど念入りに掘って隠さなくなるからです。
- 深さと入り口の高さは、セットで考える。 多くの記事が見落としているのはここです。猫が実際にまたぐ段差は、入り口の高さから猫砂の深さを引いた分です。入り口を4インチほどに切り下げ、猫砂を3インチまで入れれば、またぐのは1インチで済みます。薄く敷いた3インチの入り口より楽なうえに、固まり方もきちんと保てます。猫砂の高さは切り欠きより1インチほど低く保つとこぼれません。下にはマットを敷いてください。
- 塊を見る。 どうせ毎日すくうのですから、その30秒を使ってください。尿の塊がいくつあって、どれくらいの大きさかを、ざっくりつかんでおきます。診断しようというのではありません。初期の腎臓病を見つけるのは血液検査であって、スコップではないからです。ただ、量や回数にはっきりした変化があれば、次の受診のときに伝える価値があります。
シニア猫は、気むずかしくなったわけではありません。3歳のころの自分に合わせて作られた家を、なんとかやりくりしているだけです。壁を低く、移動を短く、足元をやわらかく。それだけで、「問題行動」の多くは静かに消えていきます。
トイレの数、置き場所、猫砂の深さについては「猫トイレ完全ガイド」で詳しく解説しています。猫砂とレイアウトを同時に変えるなら、「猫砂の切り替え方」を参考に、少しずつ進めてください。
出典
- American Animal Hospital Association / American Association of Feline Practitioners, 2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines.
- Cornell University College of Veterinary Medicine, Cornell Feline Health Center, Is Your Cat Slowing Down?
- Cornell University College of Veterinary Medicine, Cornell Feline Health Center, Chronic Kidney Disease.
- Unpacking feline dementia: A veterinary guide, dvm360.
- American Association of Feline Practitioners and International Society of Feline Medicine, AAFP and ISFM Guidelines for Diagnosing and Solving House-Soiling Behavior in Cats, Journal of Feline Medicine and Surgery, 2014.
- Cornell University College of Veterinary Medicine, Cornell Feline Health Center, Loving Care for Older Cats.
本記事は情報提供を目的とした一般的な内容であり、かかりつけ獣医師の助言に代わるものではありません。